不動産マーケットは2013年以降大規模金融緩和により順調な成長を遂げてきました。
平成バブル期(1980年後半~90年代前半)はいわゆる“土地ころがし”とした土地に対しての投資が活発となって、首都圏で地価が前年対比60%から70%上昇するなどの異常な値上がりを見せた時代です。
現在の不動産マーケットが好況と言われているのは、新築・中古マンションの急激な値上がりによるものが大きく、地価自体は住宅地で前年対比3~5%程度の伸びを示しているに過ぎません。地価上昇の性質が全く違うといえます。
都心部での新築マンション価格が年収の19倍になっている状況では、もはや一般人が買う物として考えることができなくなってきています。
また、森ビルが開発した麻布台ヒルズJP森タワー上層部で分譲された「アマンレジデンス東京」に至っては、最上階の住戸(専有面積1500平方メートル)が200億円で売れたとの話を聞くと、これは投資商品というよりも、もはや「アート」と表現されるべきものと考えます。
こうした物件価格の急激な値上がりは不動産投資家にとってはどうでしょう。
キャピタルゲインには最高の環境である反面、資産ポートフォリオを拡大するには、利回りの低い状況をどこまで容認できるかという問題に直面することでしょう。
物件の価格の上昇はどこまで?
今年の日本経済はますますインフレが進む年になりそうです。ということは、物件価格の上昇はまだ止まらないのではないでしょうか。
新築マンションにいたっては土地を仕入れしてから建築、販売、引き渡しまでに約1年半から2年はかかります。
ここ数年建築費はかなり上がっている状況です。地価も年数%ではありますが、上昇傾向にあるので、新築マンションの原価はおのずと上がります。今年販売されるマンション価格が上がるのは明白ですね。
そして新築マンションが一般市民の手が届かない状況になっているため、実需層は中古マンションに流れ、中古マンション価格も上昇基調にあります。
マンション価格はさらに上がり続けていくかといえば、そうではないと思います。なぜなら不動産マーケットにおいてはすでにインフレを先取りしている状態にあるからです。
現に首都圏新築マンションの平均価格は2022年から2023年にかけて大幅に上昇しましたが、2024年はほぼ横ばいの状況になりました。
また、すでに首都圏でも周辺3県の郊外住宅地などで新築戸建の在庫が増える、中古マンション価格の下落が生じているなど調整局面になっています。
投資需要に支えらえてきたマンションマーケット。今年はこの先を見極める大事な年になりそうですね。そしてその一番のポイントが「金利」です。
金利の上昇
日銀は昨年「金利ある世界」の復活を宣言。
政策金利の引き上げで最初に影響が及ぶのが既存ローンを変動金利で調達している人になります。
政策金利は短期プライムレートに連動しています。したがって変動金利型住宅ローンを組んでいる人は、金利の上昇を見込んでおく必要があります。
そして不動産投家にも注意が必要です。
政策金利の引き上げはリスクフリーレート※となる国債などの利回りの上昇を連想させます。そしてすでに30年物の国債レートは上昇していて、中国国債30年物の金利を上回り始めています。
リスクフリーレートが上昇するということは、投資にあたっての期待利回りをその分引き上げて考える必要がでてくるということになります。
投資は、リスクフリーレートとなる国債など最も安定性が高いレートにリスクプレミアムを乗せて構成されているのが実情です。
なのでこれまで3%の利回りでも買っていたのが3.5%または4%に引き上げることになりそうです。
インフレで家賃は上げられるのか?
期待利回りを上げる方法の一つとして考えられるのは「家賃収入が上がること」です。しかし、家賃上昇が期待できないということは取得した不動産価格が下がらなければ利回りを確保できないということになります。
世の中はインフレです。家賃は当然上昇基調になることが期待できます。ただ、日本の人口は減少している状況で家賃は期待どおりに上げることができるのか・・・。
ここで重要なのは「立地」になります。人の出入りが活発なエリアは不動産が常に動きます。入れ替わりが生じれば家賃は上げやすくなります。また給料が上がると思われる大企業社員などが好む立地では、家賃上昇に耐性があるものと予想されます。
しかしながら日本は借地借家法によってテナントがものすごく強い立場にあります。賃料引き上げを更新時に要求したとしてもテナントは応じないことができます。貸す側は値上げの理由を合理的に説明できない限り裁判をしても勝てない可能性があります。
したがっていくら世間がインフレでも家賃が上昇するにはかなりのタイムラグが出るでしょう。入れ替えであれば即座にマーケット賃料に切り替えることは可能です。人の出入りが活発な立地を選択するのはここにあります。
今後、郊外や地方都市などで人口が増える、経済が活性化するといことは起こりずらいです。投資目線を今まで以上に厳しくする。都心部より利回りが高いという理由で手を出したりしないほうが賢明だと考えます。
新築アパート再熱?
インフレによって家賃の上昇が注目されている中、新築アパートの需要が伸びる可能性があります。
元々新築は中古に比べて利回りが低いイメージがありました。
しかし、家賃が上がっている現状に対してリアルタイムに設定できることが強みでもあります。
確かな立地を選定し土地から購入し、自分で建てる。もしくは、建売新築アパートを購入する。土地から購入すると境界や越境、最適なプラン作成など、副業で行う場合は面倒くさい作業がかなりあるため、そのようなリスクを軽減するために、できあがった物を買うことも一つの選択になります。
アパート建築に適している土地は、中途半端な大きさの土地が多く不動産業者でもなかなか手が出しにくいケースがあります。そうなると競合も少ないので相場で買うことができれば新築であっても利回りを確保できる可能性が高いといえます。
弊社も今年から新築アパートの供給を再開しますし、今後の不動産投資に関しても注目していきたいですね。