世界のグーグルが米司法省に反トラスト法で訴えられています。
この提訴の狙いは何のか?
実は“新たなグーグル”の誕生にあると言われています。
今回はその辺りのところを過去を振り返りながら解説していきます。
反トラスト法とは?
独占資本の弊害を暴威するため、1900年頃に制定された法律。
日本でいう「独占禁止法」にあたります。
司法省の指摘点は?
グーグルが検索や広告において圧倒的なシャアで競争を妨げていることとしています。
当然ながら検索エンジンの世界シェアはダントツでグーグル。
★スマホやパソコンでなどのデバイスで「デフォルトの検索エンジン」として採用させている。
・アメリカのスマホ市場シェア6割のアップルに年間80億~120億ドル支払ってsafariブラウザにおける検索エンジンを採用してもらっている。
・アンドロイドを無料で提供する代わりにグーグルの検索サービスなどを組み込むことを求める。
*デフォルトとは
コンピューターであらかじめ設定されている標準の状態のことをいう。
★グーグルはすでに普及しているモバイルやPCだけでなく、新たな検索デバイスにもグーグル以外の検索エンジン、音声アシスタントなどを入れないよう契約を求めている。
例)スマートウオッチ、スマートスピーカー、スマートTVなど・・・。
司法省の見解としては、グーグルが検索の「入口」を独占しているため、新規参入が困難になっているとの見方をしている。
競争が妨げられると何が問題なのか?
答えとしては、独占によって消費者が不利益を被る可能性があるということです。
しかし、この「消費者の不利益」が時代とともに変わってきました。
この反トラスト法ができた1900年代当時が想定していた消費者の不利益とは、独占による価格の高騰です。
しかし、グーグルはサービスのほとんどを無料で消費者に提供しています。
★独占企業が競合を排除することにより次の消費者不利益になるとしています。
・プライバシー保護なども含め、検索の質が低下
・検索エンジンの選択肢がなくなる
・イノベーションがうまれづらくなる・・・等々
という上記の内容で消費者不利益がでるため、司法省は目を光らせています。
反トラスト法によって新陳代謝が起きる説
実はアメリカのIT企業には2、30年に一度反トラスト法のメスが入っています。
そして、裁判になることによって巨大IT企業を委縮させ、新たな企業に飛躍のチャンスを与えています。
当時巨大IT企業だったIBMは、ハードと抱き合わせでソフトを無料提供する行為が、競合を意図的につぶす「反競争的行為」かどうかが争点となり提訴されました。裁判の結果は和解となったがそれ以降IBMはハードに注力する流れに変わり、マイクロソフトが生まれます。
ブラウザを開発していた「Netscape」に対抗するため、マイクロソフトは自社のブラウザ「Internet Explorer」を開発し、それを無料で提供することでNetscapeを潰そうとしたため、1998年に反トラスト法で提訴されています。
結果的にはマイクロソフトと司法省は「和解」というかたちで終わったが、この訴訟を機に競合になる可能性のある新興企業を潰すという動きは弱まったと言われています。
そして大きく飛躍したのがグーグルです。
そして、マイクロソフト訴訟で司法省サイドにアドバイスした弁護士はのちに
「マイクロソフトへの提訴がなければグーグルが今のように台頭することはなかったであろう」
と言ったそうです。
今回の提訴で新しい企業が台頭してくるのでしょうか?
ここにきて、いわゆるGAFAに対して政治的な圧力が高まってきていますね。
*GAFA
GはGoogle、AはApple、FはFacebook、AはAmazonの略
特にGAFAの租税回避に関しては、世界中で批判の声も増しています。
オーストリアのケルン首相は「アマゾンなど多国籍企業のオーストリアの納税額はソーセージを販売する屋台1軒分より少ない」と批判したそうです。
もし本当にGAFAの解体が始まったとすると、将来的に「S&P500インデックスファンド」などに影響が出る可能性もあります。
なぜなら、S&P500種指数は、GAFAにマイクロソフトのMを加えた5銘柄が市場の牽引役になってきたからです。
そして実はこの5銘柄を除いたS&P495はそれほど大きく上昇していない事実があります。
*S&P500とは、ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している大型株500銘柄の株価を基準にした時価総額加重平均型の指数のこと。
今回のグーグルへの提訴によって、GAFA解体の幕開けになるのか注目していく必要がありますね。